2024.06.26 エンジニアズコラム 光の特性 光の干渉

第8回 光の干渉

光の特性

当社の検査装置にとって絶対に欠かせないものが「光」です。例えば光の無い真っ暗闇の中で製品にキズがないか検査しなさい、と言われてもキズどころか製品自体が見えないので検査どころではありません。光(可視光)は、以前赤外線のコラムで触れたように「電磁波」の一種です。電磁「波」という名前が示す通り、光は波の特性を持っています。例えば、プールやお風呂をイメージしてください。水の波がぶつかると、互いに打ち消し合ったり、反対に足し合わせて大きくなったりします。このような特性を波の干渉といい、光でも同じ現象が起こります。では、光の波が打ち消し合う、あるいは大きくなるとはどういうことか、少し深く考えていきましょう。

光の干渉

同じ光源から2つの光を同時に出した場合とタイミングをずらして出した場合を考えてみます。同時に光を出した場合には2つの光の波の山と谷の位置(位相)が揃います。これらを足しあわせると、波は大きくなり光としては明るくなります。一方で、タイミングをずらして出した光は位相がずれることで、足し合わせた時には互いに打ち消し合い暗くなります。光の波の大きさは光の強度の変化、すなわち明暗として捉えることができます。

図-1 光の干渉実験

身近な光の干渉の例

光の干渉は、シャボン玉が様々な色に見える現象など、身近なもので観察できます。この現象は、シャボン玉の膜の表面と裏面でそれぞれ反射した光が干渉することで引き起こされます。

図-2 シャボン玉の干渉の例

太陽光には様々な色の光が含まれており、それらが混ざり合って白色に見えています。その光がシャボン玉で反射する時に、膜の厚さによって強く反射する色が変わることで、シャボン玉は様々な色に見えるわけです。例えば、厚い部分は黄色、薄い部分は水色、さらに厚い部分はまた黄色、といった具合です。

図-3 シャボン玉

また、スマートフォンの画面に保護フィルムを貼ると、時に虹色に見えることがありますが、これも光の干渉による現象です。実は、この時の厚みの変化というのはnmオーダーの変化だったりします(1nmは1mmの100万分の1)。これは光の波長もnmオーダーであることが理由なのですが、そういった非常に細かな変化が色という身近で分かりやすい違いとして現れるところが非常に面白いところです。

光の干渉を利用した装置

製造現場で使用される測定装置にもレーザー干渉計や白色干渉計といった、名前に干渉という言葉が入っている装置があります。これらの装置は光の干渉を利用して、物体の表面形状を非接触で、高速、精密に計測することが可能です。主な用途としてはレンズなどの球面体の形状測定や、製品厚みの測定、製品表面の形状測定等に採用されています。

その他にも、通信や医療など様々な分野で干渉の原理は利用されています。例えば通信分野では、光ファイバー通信が光の干渉を利用して高速データ伝送を実現しています。医療分野では、光干渉断層撮影(OCT)技術が網膜の詳細な画像を取得するために使用され、早期の眼疾患の診断に貢献しています。

ヒューテックでも、シャボン玉の例で上述した分光干渉の原理を使用した「AccureS」を販売しています。精密な非接触測定が可能で、インラインでフィルム上のコーティング厚みを測定、管理することができます。

図-4 分光式薄さ計「AccureS」

このように、光の干渉は人類や技術の進歩において重要な役割を果たしており、私たちの生活や健康を豊かにしてくれています。光の干渉を利用した最先端の技術は、今後もさらに発展し、多様な分野での新たな応用が期待されています。
今回は、光のユニークな特性をご紹介しました。身近な光の、波としての側面にもぜひ注目してみてください。

参考文献

1.市原裕、「干渉計を辿る」アドコム・メディア株式会社、(2020)
2.Daniel Malacara、「光学実験・測定法Ⅰ」アドコム・メディア株式会社、(2010)
3.Eugene Hecht、「ヘクト光学Ⅰ」丸善出版株式会社、(2002)

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